図でつかもう

砂に残った跡から、昔の水を考える

見つけたのは塩の結晶と、その周りの物質。そこから、昔の環境を考えました。

  1. 研究者の考え / 1

    もとの天体には水があった

    リュウグウのもとになった大きな天体の内部に、水が流れていたと考えられます。

  2. 研究者の考え / 2

    水が減り、塩水が濃くなる

    水が凍ったり蒸発したりすると、残った塩水に成分が集まったと考えられます。

  3. 砂から見つけたもの

    塩の結晶の周りに、物質が集まる

    持ち帰った砂では、塩の結晶の周りに、窒素を含む物質が集まっていました。

最初の2段階は、砂を分析して考えた過去の説明です。今の海や生命を見つけたわけではありません。図の粒の数・色・位置は実際の試料を再現していません。
資料:研究機関の発表を見る。説明図:いしころ編集部。
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結晶(けっしょう)
中の小さな粒が規則正しく並んでできたもの。外側に平らな面が見えることがあります。
窒素(ちっそ)
物質をつくる元素の一つ。今回調べたアンモニアなどにも含まれます。
痕跡(こんせき)
昔の出来事を考える手がかりになる、残された跡のことです。

小惑星の砂の中に「塩」があったと聞くと、宇宙に海があるような気がしませんか。京都大学などの研究チームは2026年9月3日、探査機「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの砂を分析し、水に溶けやすい塩の結晶の周りに窒素を含む物質が集まっていることを発表しました。(京都大学の発表)

どの塩が見つかった?

発表によると、炭酸ナトリウムや岩塩などの塩の結晶の周りに、硝酸塩やアンモニアなどが集まっていました。どちらも窒素(ちっそ)という元素を含む物質です。元素は、いろいろな物質をつくるもとになります。

岩塩は身近な「塩」と関係する鉱物ですが、今回大切なのは塩だけでなく、その周りに何が集まっていたかです。物質の名前を全部覚えなくても、この点に注目してみましょう。

研究チームは、リュウグウのもとになった大きな天体の中で、水が凍ったり蒸発したりして減り、残った塩水が濃くなったと考えています。水が減ると、溶けていた成分が集まりやすくなる、という考え方です。これは砂を詳しく調べて考えた昔の環境の説明で、今のリュウグウに海があるという意味ではありません。

なぜ地球に落ちた隕石だけでは難しい?

研究者の説明では、この塩の結晶は湿気に触れるだけでも変わりやすいそうです。地上で雨風にさらされた隕石からは、同じ状態のまま見つけにくい。探査機が試料を直接持ち帰ったからこそ、変わりやすい痕跡を調べられました。

考えてみよう:砂糖を水に溶かして、水が蒸発するとどうなる? 身近な経験は手がかりになります。ただし、リュウグウの研究結果そのものを家庭の実験で再現できるわけではありません。

「生命発見」と言っていい?

いいえ。今回見つかったのは塩の結晶と窒素化合物です。研究チームは、生命の材料ができる環境を理解する手がかりになると説明していますが、生命そのものを発見したとは発表していません。ニュースの見出しだけで飛びつかず、何を測ったか/何を推測したかを分けて読むのが大切です。

地球の標本では、岩塩の図鑑で結晶の形を観察できます。これはリュウグウの試料の写真ではなく、別の標本です。

この記事の資料

主な出典:京都大学「リュウグウの砂に生命の材料につながる濃厚な塩水の痕跡」(2026年9月3日)

資料確認日:2026/10/1。写真の出典は各写真の表示または図鑑ページに記載しています。未知の石の鑑定や、現地での採集許可を示すものではありません。